今回は建設業許可申請について書いてみたいと思います。
建設業を営まれている方でもそうでない方も、「建設業許可」という言葉は1度は耳にしたことがあると思います。
建設業の許可を取得した方が良いのかそうでないのか、取得するにしても自分は許可を取得することができるのか。このような疑問を感じておられる方もたくさんいらっしゃるでしょうから、建設業許可についてできるだけわかりやすく書いていきたいと思います。
【1】建設業の許可とは
建設業の許可を取得するとはそもそもどういうことなのか。
- 「建設業を営もうとする者は」建設業の許可を受けなければなりません。」
この文言は「建設業」で検索するとよく出てくると思います。ここだけを読むと、建設業許可を持っていないと建設業の仕事ができないようにも思えます。
しかし、この文章には続きがあります。
- 「ただし、軽微な建設工事のみを請け負って営業する者は、当該許可を必要としない。」
つまり、「軽微な建設工事のみ」を仕事とする場合には、建設業許可を取得する必要はないのです。
では、「軽微な建設工事」とは何を指すのか。ここでは、「建築一式工事」の場合と、「建築一式工事以外」の場合にわけて考える必要があります。
- 「建築一式工事」
- ①工事1件の請負代金が1500万円未満、②延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事、この2つの場合は、軽微な建設工事に該当するため建設業許可は不要です。
- 「建築一式工事以外」
- ①工事1件の請負代金が500万円未満の建設工事、この場合は軽微な建設工事に該当するため建設業許可は不要となります。
この金額の感じ方はお客様によって異なると思いますが、いずれにしても、軽微な建設工事のみを仕事としない方は、建設業許可が必要となります。
【2】建設業許可業種について
大きく「建設業」といっても、建設業には様々な種類があります。ひとつの種類だけではなく、数種の建設業工事を営んでおられる方もたくさんいらっしゃいます。
建設業許可は、建設工事の種類(全29業種)ごとに受ける必要があります。(各業種ごとに一般建設業又は特定建設業(後述)のいずれか一方の許可を受けることができます。)
その建設業の各業種ですが、
- 【一式工事】
- 土木一式工事、建築一式工事
- 【専門工事】
- 大工、鉄筋、熱絶縁、左官、ほ装、電気通信、とび・土木・コンクリート、しゆんせつ、造園、石、板金、さく井、屋根、ガラス、建具、電気、塗装、水道施設、管、防水、消防施設、タイル・れんが・ブロック、内装仕上、清掃施設、鋼構造物、機械器具設置、解体
となっています。
なお、一式工事とは、「元請業者の立場で総合的にマネージメント(企画や指導、調整等をすること)する事業者向けの業種」といわれています。
実に数多くの業種が存在しますが、営む業種については全て建設業許可が必要になることはご注意下さい。
既に何かの建設業許可をお持ちの方が、追加で業種の許可を取得することももちろん可能です。
また、平成28年6月1より、解体工事業が建設業許可の種類の一つに追加されています。
【3】大臣許可と知事許可の違い
建設業許可において、「大臣許可と知事許可」どちらを取得したらよいのか、お考えの方もいると思いますが、ここはすごく簡単です。
- 2以上の都道府県に営業所を設けて営業する場合・・・・・大臣許可
- 1つの都道府県内にのみ営業所を設けて営業する場合・・・知事許可
となっています。
なお、「営業所」という言葉についてですが、「工事の契約の締結」は営業所でなければ行うことが出来ません。「建設工事の施行」は営業所を設置してない都道府県でも行うことができます。この言葉の違いについてはご注意下さい。
【4】一般建設業と特定建設業の違い
一般建設業と特定建設業の違いですが、ここも大臣許可と知事許可に場合と同様に簡単な区分となっています。
発注者から直接請け負う1件の工事について、その工事の全部又は一部を、下請代金の額が4000万円以上となる下請契約を締結して施工しようとする場合に「特定建設業許可」が必要となります。
そして、特定建設業以外の場合が、「一般建設業」に該当します。
なお、上記下線部についてですが、建築工事業の場合は6000万円以上となっております。また、この金額には消費税及び地方消費税相当額を含みますが、元請負人が提供する材料等の価格は含みません。
例えば、発注者(お客様)から1億円の工事を直接請け負ったとしても、下請けに4000万円以上の下請工事を発注しないならば、一般建設業の許可で大丈夫です。
ちなみに、この一般建設業と特定建設業は、許可取得の条件である財産的基礎のところで大きな差が出ます。当然、特定建設業の方が資産要件が厳しく設定されております。ここについては、建設業の許可条件のところであらためて記述しております。
【5】建設業の許可条件
建設業許可を取得するには主に以下に記載する「4つの条件を満たし」、さらに「欠格条件に該当しない」必要があります。
ここの部分が一番知りたいという方が多くいらっしゃると思います。
まず、その4つの条件とは
- 経営業務の管理責任者
- 専任技術者
- 誠実性
- 財産的基礎、金銭的信用
です。そして、
- 一定の欠格要件に該当しないこと
が必要となります。
これから、この許可条件について細かく書いていきます。
【5-1】経営業務の管理責任者
経営業務の管理責任者とは、「建設業に係る経営業務について5年以上経験した者」のことを指します。
この「経験」とは、具体的に会社の役員や、事業主・支配人、支店長、営業所長等を言います。業務として携わっていただけでは足りず、地位や役職が重要になりますのでご注意下さい。
さらに、この経営業務に携わっていた5年間ですが、経営に携わっていた会社が建設業許可を取得していたか否かは関係ありません。建設業を営んでいる会社であれば、許可を取得していなくても大丈夫です。
ここの部分については、法人ならば登記事項証明書等の書類を提出することで確認を取ります。そして、以上の条件を満たす方が、現在の地位として
- 法人・・・常勤の役員
- 個人・・・本人又は支配人
であることが必要です。
法人の場合の常勤の役員ですが、名前だけではもちろんダメです。原則として、本社あるいは支店等において休日その他勤務を要しない日を除き一定の計画のもとに毎日所定の時間中、その職務に従事している必要がありますのでご注意下さい。
また、許可を受ける業種が経験と異なる場合でも、経験としてカウントすることが可能です。しかし、この場合は5年ではなく6年の経験が必要となります。
【5-2】専任技術者
建設工事に関する請負契約を適正に締結したり、履行するためには、許可を受けようとする建設業に係る建設工事についての専門知識が必要となることは当然でしょう。
そして、請負契約の締結や、見積もり、入札をしたりといった業務の中心は各営業所で行われることが通常であることから、建設業を営もうとする全ての営業所に許可を受けようとする建設業に関する一定の資格や経験を持った技術者を「専任」で配置することが法律上求められております。
このような「一定の資格」や「経験」を持った人のことを「専任技術者」と呼びます。
「専任」とは、その営業所に常勤して専らその職務に従事することを言います。ですが、次のような場合は、原則として「専任」と認められないこととなっています。
- 技術者の住所が営業所の所在地から著しく遠距離にあり、常識上通勤不可能である場合。
- 他の営業所において専任を要する職務を行っている場合。
先述した通り、各営業所に必ず一人の専任技術者を設置させるため、このような規定が設けられています。
また、専任技術者となりうる「技術者要件」についてですが、ここはかなり細かいところです。
基本的には、「一定の国家資格等を有する者、あるいは10年以上の実務経験を有する者」と考えていただければ大丈夫です。
「一定の国家資格」とは、例えば、2級建築士をお持ちの方は、建築一式工事、大工工事、屋根工事、タイル・れんが・ブロック工事、内装仕上工事の建設業許可において専任技術者となることが出来ます。
ここの部分は国家資格の資格者証や合格証書等にて確認を取ります。
この他にも、たくさんの国家資格が挙げられておりますので、どの資格がどの建設業許可において専任技術者になれるかお知りになりたい方は、お気軽にお問い合わせ下さい。
また、「実務経験」についてですが、さきほど「10年」と申し上げましたが、ここも場合によっては3年に短縮される場合があります。
ここについてもお気軽にお問い合わせいただければと思います。
【5-3】誠実性
建設業許可を受けようとする者が法人である場合には、当該法人・役員等・使用人等が、個人である場合には本人・使用人等が、請負契約に関して不正な行為や不誠実な行為をするおそれが明らかでないことが必要であるとされています。
建設業に係る請負契約は、その請負金額がかなり高額になることが多いと思います。
そのような高額な契約をするにあたって、建設業者が不誠実な人であったとしたら、工事を依頼する側はとても不安になりますよね。そのため、このような規定が置かれています。
具体的に、「不正な行為」とは、請負契約の締結又は履行の際における詐欺、脅迫、横領、文書偽造等、法律に違反する行為を指します。
また、「不誠実な行為」とは、工事内容、工期、天災等の不可抗力による損害の負担等について請負契約に違反する行為を指します。
例えば、建築士法や宅地建物取引業法の規定により、不正又は不誠実な行為を行ったことで免許等の取消処分を受け、その最後の処分から5年を経過しない者等を言います。
【5-4】財産的基礎、金銭的信用
誠実性のところでも触れましたが、建設業の工事は請け負う金額がかなり大きくなりがちです。この点から、請け負った工事金額に見合った資金調達能力を建設業者が有しているかということが行政によってチェックされます。
では、どうやってこの部分をチェックしていくのか。
既存の企業にあっては、直前の決算期における財務諸表において、また、新規設立の企業にあっては創業時における財務諸表において判断することになります。
そして、この財産的基礎の部分については、一般建設業と特定建設業で条件に違いがあります。
まず、一般建設業についてみてみましょう。一般建設業においては、次のいずれかに該当する必要があります。
- 自己資本の額が500万円以上であること
- 500万円以上の資金を調達する能力があること
主にこの2つが条件となっています。
1.の自己資本とは、法人では貸借対照表における純資産合計の額をいい、個人では、期首資本金・事業主借勘定及び事業主利益の合計額から事業主貸勘定の額を控除した額に負債の部に計上されている利益保留性の引当金及び準備金の額を加えた額をいいます。
こう書かれると難しく感じるかもしれません。少し乱暴ですが、換言すると、「プラスの財産からマイナスの財産を差し引いて500万円以上ありますか?」
ということが書かれています。多くのお客様は税理士さんに税務をご依頼していると思いますので、この辺について問い合わせてみるとわかりやすく教えて下さると思います。
そして、2.の意味についてですが、これは担保とすべき不動産等を有していること等により、金融機関から500万円以上の資金について融資を受けられる能力をいいます。
具体的には、取引金融機関の預金残高証明書又は融資証明書等により確認します。
多くのお客様が、この残高証明書にて財産的基礎の条件をクリアされておりますので、このやり方が一番わかりやすくてよろしいのではないかと思います。
次に、特定建設業の場合はどうなるか。この場合は、次のすべてに該当しなければなりません。
- 欠損の額が資本金の額の20パーセントを超えていないこと。
- 流動比率が75パーセント以上であること。
- 資本金の額が2000万円以上であり、かつ自己資本の額が4000万円以上であること。
これら全てを満たさないといけないというのは、とても厳しいですよね。
特定建設業者は、多くの下請人を使用して工事を施行することが一般的であることから、特に健全な経営が求められることから、上記のような厳しい条件が求められているのです。
【6】欠格要件について
欠格要件とは、許可を受けようとする者が以下に記載するような事項に該当する場合には、許可を受けることが出来ないというものです。
かなりの数がありますので、ここでは一例を記載したいと思います。
- 成年被後見人、被保佐人又は破産者で復権を得ない者。
- 不正の手段により許可を受けたこと、又は営業停止処分に違反したこと等によりその許可を取り消されて5年を経過しない者。
- 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者。
これら以外にも何点か欠格要件があります。ご不安な方は、この点についてもお問い合わせいただければと思います。
ここまでで記載してきました、項目【5】と【6】をクリア出来ましたら、あとは申請書を作成の上、その他の必要書類を添付して行政へ提出することで、建設業許可が取得できます。
なお、必要書類はかなりの量がありますので、ご自分で全て集めようとするとかなりの時間がかかってしまうことがあります。
また、申請をしてから許可が下りるまでは1ヵ月から2ヵ月くらいの期間がかかります。ここは申請時期や行政によっても異なるのでご注意下さい。
【7】許可の有効期間について
建設業許可の有効期間は、許可を受けた日から5年間です。
この有効期間の後も、引き続き建設業を営もうとする場合には、有効期間が満了する30日前までに更新の許可申請書を提出しなければなりません。
この5年という期間ですが、少し長めの設定となっています。ですので、ついうっかり忘れていた・・・ということが起こります。せっかく許可を取得したのに、また許可の取り直し・・・なんてことにならないように期限については気をつけたいものです。
なお、更新許可申請書を提出している場合においては、有効期間の満了後であっても申請に対する処分(許可あるいは不許可)があるまでは、引き続き従前の許可が有効となります。つまり、有効期間が満了する30日前までに更新の申請を出しておけば、とりあえずは安心・・・ということになりますが、焦って申請したためにミスが生じて・・・等ということもありえますので、更新が近づいてきた場合には、早めの準備をされておく方が望ましいです。
まとめ
ここまで読んでいただきありがとうございます。建設業の許可申請が出来るかどうか、それを判断し、そこからさらに書類の作成や、その他の書類を集める・・・ここまでの作業をするにはなかなか時間がかかると思います。
建設業許可申請は行政書士が得意とする業務のひとつでもあります。何かわからないことや、疑問に感じられるところがあれば、お気軽にご相談いただければと思います。
また、書式が変更になったり、制度の改正が行われたりといったことも頻繁にありますので、この点についてもご相談いただければと思います。