遺産の分割については、まず相続人同士の「遺産分割協議」で話し合われます。この協議で全員が納得できれば一番なのですが、遺産の内容や相続人それぞれの家庭環境、その他の事情によってなかなか成立しないこともよくあります。当事者同士で結論を出すことが難しい場合や、成立した内容に納得がいかない時は、家庭裁判所へ申し立てることによって専門家が仲立ちをしてくれます。相続人の申し立てに応じて「遺産分割調停委員会」が作られます。調停委員は相続人全員の意見や経済状況などを聞き取り、分割内容を提案します。ただし、これはあくまで「提案」であるため強制力はありません。不服があれば次は「審判」に移ります。審判では裁判官によって最終的な判断が下されます。応じない相続人には「履行勧告」が出されることもあります。裁判所というと構えてしまいがちですが、第三者の目を通して相続を見つめ直す手段として活用されます。
通常、遺産分割は協議、調停、審判と段階的な制度が存在していますが、最初から審判を申し立てることも制度上は可能です。ただ、実際には「調停で解決できればそのほうが望ましい」と考えられています。そのため、こじれた内容でいきなり裁判を申し立てたとしても、まずは職権で調停に付されることになるのが通常です。調停では、調停員が間に入って話し合いを整理してくれます。調停とは「和解の場」であり、調停員は中立の立場から話し合いの手助けを行うだけで、最終的に「どこで折り合いをつけるか」は当事者に委ねられています。あくまで「話し合い」なので、全てを法で解決するわけではありません。調停員が人間関係のバランス感覚に優れた人、社会常識がある人、魅力的な人に当たると、話し合いがスムーズに進むかもしれません。「どんな調停員に当たるか」ということは、調停において非常に重要なことかもしれません。