新しい株式会社を設立するためには、本店所在地を管轄する登記所(法務局)で会社設立登記の手続きを行う必要があります。登記されていないものはたとえ『会社』を名乗って事業を行っていたとしても、法律上、会社とは言えません。
株式会社設立の際に出資をする人のことを「発起人」と呼びますが、発起人の方には原則として「発起人名義の銀行口座に資本金を振り込む(もしくは預け入れる)」という形で出資をしていただきます。
ここで問題となるのが、「いつ出資するのか?」振込みのタイミングです。
通常、資本金の金額等については定款によって決定することが多いので、出資するタイミングは定款が作成された後とならなければなりません。資本金について決定する前に出資を行うということは想定できないからです。
ただ、事実上の問題として、「定款」という書類(データ)を作成する前に発起人が資本金の振込みをしてしまうということはよくあることです。
登記手続きの実務上、「定款作成日」と「出資日」の前後関係はデリケートな問題です。「出資日」というのは「資本金を振り込んだ日」ということですので、その日付は銀行口座の預金通帳に記載されており、明らかでわかりやすいのですが、これに対して「定款作成日」は、ややわかりにくいかもしれません(考え方は紙ベースの定款かデータとして存在する電子定款かによって異なります。)。
司法書士や行政書士が作成する定款はほとんどが電子定款ですが、電子定款の場合の「定款作成日」は「作成者(=定款作成代理人である司法書士、行政書士)の電子署名がなされた日」とされています。
そういうわけなので、発起人が出資を済ませた後で定款作成~会社設立登記のご依頼をいただいた場合には、定款によって出資金について決定したという建前をとることができません。
定款を作成した後で再度出資金の振込みをやりなおすことができればよいかもしれませんが、発起人が多数であったり法人であったりすると出資のやり直しが困難なケースもあり、このような二度手間をとらせてしまうことは避けたいものです。
やや技巧的なやり方にはなりますが、こういった場合でも、定款作成よりも先に発起人の決定により資本金の金額等を定めた旨の書類を作成することにより解決することができます。
むしろそれが事実関係に合った書類のあり方ですので、無理に「定款で決定したことにする」よりも好ましい方法と言えるでしょう。